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キャップジェミニ、「World energy markets observatory-2022」を発行

(邦題:「世界のエネルギー市場観測 – 2022年度版」)

October 13, 2022

本レポートでは、「手頃な価格のエネルギー供給の確保」と「気候変動との闘い」という、等しく重要な2つの課題のバランスを見出さなければならない、と提言しています。

  • エネルギー削減の取り組みが大きく進展し、今冬の節電リスクが軽減されることを期待
  • 自然エネルギーのパラドックスに目を向ける必要がある。特にヨーロッパは、ロシア産ガスへの依存と、エナジートランジションの主要構成要素への依存を引き換えにしてはならない。
  • 自然エネルギー導入の加速、グリーン水素電解槽や炭素回収・貯留技術などの主要技術への投資の加速が求められている。



【2022年10月13日パリ発】 キャップジェミニは、De Pardieu Brocas MaffeiVaasa ETT 、Enerdataと共同で作成した「World Energy Markets Observatory(WEMO)(邦題:「世界のエネルギー市場観測 2022年度版」)[第24版]を発行しました。
本レポートによると、「手頃な価格のエネルギー供給の確保」と「気候変動との闘い」という、等しく重要な2つの課題のバランスを取ることが急務となっています。今年発行のWEMOでは、エネルギー市場設計の改革・エネルギー供給の持続可能性・長期的なグリーン投資のための有利な融資条件に対する短期的行動と長期的決定を組み合わせることで、このバランスをどのように達成できるかを調査しています。

本レポートの主な考察と提言は以下の通りです。

エネルギー危機には、短期的にはエネルギー削減とガス貯蔵で対応する
ロシアのウクライナ侵攻を受け、欧州のロシア産ガスへの依存に象徴される長期的なリスクは極限に達しています。欧州、特にドイツにおけるロシア産ガスへの依存は、欧州のガス生産削減とガス消費増加を背景にここ20年間に高まりました。これはネットゼロ推進のために温室効果ガス(GHG)排出量を削減する必要性、福島原発事故後の原子力発電所の閉鎖、その他の経済的考慮によって、さらに進行しています。

現在、欧州ではロシア産ガスからの撤退を余儀なくされており、今冬のガスの安定供給は、容量貯蔵施設の充填(EU法は、レーデン施設を含むガス貯蔵施設の貯蔵率を2022年11月1日までに少なくとも80%まで充填するよう定めている)、ガスの輸入フローの特定[1]、最も重要なこととしてエネルギー削減キャンペーンの効果の3つにかかっています。多くの欧州諸国で開始されている省エネのためのインセンティブは、意義ある変化へのきっかけとなる可能性があります。

中長期的な自然エネルギーのパラドックスを回避する
ロシアの供給から自立し、経済の電化を達成するために、自然エネルギーの普及を加速させるというEUの新しい計画では、現在から2027年の間のエネルギー投資に、2,100億ユーロの追加投資が必要となります。現時点では、風力発電と太陽光発電の技術が最も有望なソリューションです。[2].

キャップジェミニ、エネルギー&ユーティリティ部門 シニアアドバイザーのColette Lewinerは、次のように述べています。「慎重にバランスを取る必要があります。つまり、太陽光や風力のような短期的なソリューションに適切に賭ける一方で、長期的には第3世代の大型原子力発電所やSMR[3] を、そのようなプログラムを開発できる国に建設することです。私たちは、新たなソリューションとその影響に対して、現実的である必要があります。例えば、経済的・技術的な理由から、水素は今世紀半ばまでにネットゼロの役割を果たすことができません。ですからグリーン水素は、CO2削減が困難な産業用に確保されるべきです」

再生可能エネルギーの中でも太陽光発電は、大きな成長の可能性を秘めています。二面電池・一体型レンズ・夜間でも発電可能なリバースソーラーパネルなど、太陽エネルギーを最大限に活用できる革新的なツールや手法の進歩を期待できるからです。また、風力発電と比較すると、太陽光発電所は地域社会により受け入れられやすいと言えます。しかし、現在EUでは、太陽光発電(PV)パネルの75%が中国から輸入されており、過去10年間でEUの国内PV生産は減少しています。欧州は、ロシア産ガスへの依存に代えて、PVパネル、レアアース、レアメタルのようなエネルギー転換に必要な部品を中国に依存しないよう注意しなければなりません。欧州政府は、主権を取り戻すために、PVパネルや電池の生産のようなハイエンドな重要産業を国内で発展させるための適切な技術・財政・規制条件を設定すべきです。さらに、低炭素発電投資を促進するために、大胆な電力市場改革が合意されなければなりません。

一方、原子力は復興の機運が高まっており、電力の脱炭素化や電力網安定化の中核となる国産エネルギーとして認識されています。ドイツやベルギーなどの国は、短期的に既存の原子炉を稼働し続けるべきだとしています。また英国・米国・日本・EU・中国などの政府は、中期的には原子力発電所の建設を継続するとともに、原子力発電に対する長期的な報酬制度を整備し、民間投資を促進すべきだとしています。

エネルギー危機が引き金となり、石炭火力発電所の閉鎖が遅れ、CO2排出量が増加しています。CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)技術は、こうした排出を管理するための不可欠なツールであり、CCUSプラントの導入と投資を加速させる必要があります。2021年には、97の新しいCCUSプラントが発表されました。開発中の全プロジェクトの4分の3は米国と欧州によるものです。2050年のネットゼロに向けて、2030年までに炭素回収能力を増加させる必要があるため、投資を継続しなければなりません。2021年の年間炭素回収能力は、わずか40 MtCO2です。

気候変動対策を倍増する
地政学的な混乱によりヨーロッパでは、自然エネルギーまた、プログラム開発が可能な国においては原子力などの国内エネルギー開発の必要性が高まっています。石炭の使用量が増え、2022年と2023年のGHG排出量は2021年よりも増加すると考えられますが、その影響を打ち消すような要因が2つあります。一つ目は、省エネ効果がGLG排出量に大きな影響を与える可能性です。二つ目は、2022年下半期の世界経済の減速が、相関的にエネルギー消費と温室効果ガス排出量を削減させる可能性が高いことです。

こうした傾向にもかかわらず、Fit for 55REPowerEUなどのEU政策パッケージや、バイデン政権による4,300億ドルのインフレ抑制法、インドなどの新たな国家気候政策に見られるように、世界最大排出国が気候変動と闘う政治的意志は、現在も存在し、なお高まっています。

キャップジェミニ、グローバルエネルギー&公益事業インダストリー、リーダーのJames Forrestは、次のように述べています。「近年、気候変動との闘いが優先され、エネルギーの安定確保は軽視されてきました。しかし、現在の危機が、世界のエネルギー市場や政府に、
この2つの課題に同時に取り組む機会をもたらしたのです。短期的にはエネルギー削減・太陽光・風力などのソリューションを活性化させ、史上最大の気候変動対策をアンロックし続けることで、等しく重要な喫緊の課題のはざまで意義ある進歩を遂げることができます」

The World Energy Markets Observatory」(WEMO)(邦題:世界のエネルギー市場観測 2022)は、キャップジェミニが毎年発行するレポートで、欧州・北米・オーストラリア・東南アジア・インド・中国の電力・ガス市場の進展や変容を追跡調査するものです。

第24版では、ロシア・ウクライナ危機など連続するエネルギー危機の引き金と影響、特にヨーロッパにおけるインフレの影響に焦点を当てています。また、例年通り、WEMO最新版では、商品市場・気候変動と規制政策・エナジートランジション・クリーン技術の進歩・インフラと適正な共有・供給と最終顧客・財務・危機が公益事業・石油・ガス会社に及ぼす影響についても詳しく取り上げています。

本レポートは、主に公表されている2021年と2022年前半のデータを参照し、データとエネルギー分野におけるキャップジェミニの専門知識を組み合わせて作成されています。また規制や顧客行動、市場データについての特別な専門知識は、De Pardieu Brocas Maffei社、VaasaETT社、Enerdata社の調査チームから提供されています。

レポートはこちら[英語版]ダウンロードしてください。

[1] バルティックパイプ経由の供給、米国などのサプライヤーからの液化天然ガスの増加、長期的にはアフリカ・アゼルバイジャン・オーストラリアからの供給を含む
[2] 太陽光や風力は断続的なエネルギー源であるため(2021年版で考察)、電力網を安定させるために蓄電が必要
[3] SMR : Small Modular Reactors(小型モジュール原子炉)